第115回看護師国家試験 総評

― 思考力・統合力・実践力を問う試験への進化 ―

第115回看護師国家試験は、全体として基礎知識の確実な理解を問う問題が多い一方で、人体の構造と機能に関する問題がやや難しく感じられた試験で、これまで以上に「考える力」を重視した試験でした。単なる知識量を測る試験から、知識を統合し、状況に応じて判断する能力を評価する試験へと、国家試験は着実に進化しています。
これまで国家試験対策では、「よく出る問題を覚える」「パターンを暗記する」といった学習が一定の効果を持っていました。しかし今回の試験では、そのような表面的な学習だけでは対応できない問題が多く見られました。国家試験は「知識を覚えているか」ではなく、「知識を使えるか」を問う試験へと明確に舵を切ったといえるでしょう。
本総評では、第115回看護師国家試験の出題傾向を分析するとともに、今後の国家試験対策の方向性、さらに臨床実践につながる学びという視点から考察します。

1.全体傾向 ― 知識の確認から「活用」へ ―

第115回の出題では、過去問題と類似したテーマを扱いながらも、設問の構造や状況設定に工夫が加えられ、単純な暗記だけでは対応できない問題が目立ちました。特に印象的であったのは次のような出題です。

  • 診断名が提示されていなくても病態理解を前提として判断する問題(PM94~96)
  • 複数の情報を整理して判断する設問
  • 検査データを踏まえたアセスメント
  • ADLや生活背景を考慮した看護の選択
  • 家族支援や地域連携を意識した内容

これらの出題は、現在の医療が「治療中心」から「生活支援中心」へと変化している流れを反映していると考えられます。

知識を個別に覚えるのではなく
疾患 → 症状 → 検査 → 治療 → 看護 → 生活支援
という一連の流れの中で理解しているかどうかが問われていました。

また、コミュニケーション能力を問う「カッコ問題」(返答・声かけ・助言・説明など)も多く見られました。一般問題に5問、状況設定問題の中で22問出題されており、臨床における対応力や対人関係能力も評価される試験であったといえます。

2.必修問題の位置づけ ― 基礎の確実性が前提 ―

必修問題は依然として基本事項を中心とした出題でしたが、「知っていれば即答できる問題」と「理解していないと迷う問題」が混在していました。

正答率が比較的低かった問題として、AM4・22・25、PM11・12・21・23などが挙げられます。
感染源、酸素投与方法、脳神経、神経中枢、脊髄神経、注射、体位でした。

全体では、解剖生理、安全管理、感染対策、薬理、基本技術など、看護実践の基盤となる内容が中心に出題されています。
必修問題は「易しい問題」と誤解されがちですが、実際には基礎を確実に理解しているかを確認する問題です。

今後の学習では、過去問題に取り組む際に次の点を意識することが重要です。

  • 用語の定義を確認する
  • 検査の評価の目的と正常値の意味を理解する
  • 原理や根拠を説明できるようにする
  • 正答肢だけでなく誤答肢も調べる

このような学習は、そのまま臨床における安全確保につながります。

3.一般問題の傾向 ― 高齢者看護と生活支援 ―

一般問題では、高齢者に関連する問題の存在感が依然として高く、生活機能の維持、慢性疾患管理、在宅療養支援などが多く取り上げられました。
超高齢社会において看護師の役割は、急性期医療だけでなく、生活を支える視点を持つことにあります。
退院後の生活を想定した支援や地域生活の課題を扱った問題が、ミニ状況設定問題としてAM45・58・59・80、PM58・69などに出題されていました。
読み取れる重要な視点は次の通りです。

  • ADL・IADLの理解
  • ICF(国際生活機能分類)の視点
  • 生活背景を踏まえた支援
  • 家族を含めた包括的アプローチ

臨床では疾患や治療に目を向けるだけでなく、患者は生活者であり、生活の中で看護を考える視点が求められています。
また、114回AM35に続き、性別や年齢が明示されないミニ状況設定問題が出題されました。AM58・68・73の問題になります。
対象のイメージを自己で想像する力を要求されています。

4.状況設定問題の特徴 ― 情報整理と優先順位 ―

状況設定問題では文章量が多く、検査データや生活情報が丁寧に提示されていました。さらにその後の経過へと続く問題は、長い状況文が特徴的でした。
一方で選択肢自体は比較的シンプルで、対応の問題が多く、正答率の高い問題が多く見られています。これは、問題文を正確に読み取れるかどうかが重要であったといえます。

求められている能力は

  • 情報を整理する力
  • 優先順位を判断する力
  • 根拠をもって看護を選択する力
  • 対象に思いを寄せ支援する力

です。これは臨床判断能力そのものです。

5.統計・計算・図表問題

統計問題では、単なる暗記ではなく、計算式や数値の意味まで理解しているかが問われました。計算問題は点滴滴下数でしたが、基本パターンの習得が重要です。
酸素ボンベの残量計算、消毒液や薬用量の計算、注入速度の計算、カロリーの計算、BMI・標準体重・カウプ指数・肥満度・新生児の体重減少量など基本的な計算は、臨床では日常的に計算するので、国家試験の勉強を機に実践力につながるのでマスターしておきましょう
図表問題では、実習経験と結びついて理解しているかどうかが鍵となります。
過去の視覚素材や、図表問題を見直してみましょう。

6.災害看護と社会背景

災害看護は近年継続して出題されており、今回は特に多い印象でした。
AM59・68・72・118~120 PM73・93・118~120で出題されています。
自然災害の多い日本において、看護師が担う役割の重要性を反映した出題と考えられます。

7.今後の学習への提言

第115回の傾向から見える学習の方向性は次の通りです。

  1. 過去問を選択肢まで掘り下げる
  2. 領域横断的に理解する
  3. アセスメント力を鍛える
  4. 社会背景を理解する
  5. ケアレスミスを防ぐ

問題文を最後まで読む、選択肢数を確認するなどの基本的な注意力は、臨床でのインシデント防止にもつながります。

まとめ

第115回看護師国家試験は、基礎知識の確実性を土台としながら、統合的思考力と実践的判断力を評価する試験でした。
一方で、例年出題されていたホルモン、予防接種、離乳食、性周期、社会保障、法律などのパターン化された問題が出題されず、せっかく覚えたのに!という暗記中心の学習では対応しにくい試験であったと感じた受験生も多かったと思われます。

今後は

  • 「覚える学習」から「説明できる学習」へ
  • 「点の知識」から「線と面の理解」へ

と学習を発展させることが重要です。

国家試験はゴールではありません。
看護師として患者の生活を支える第一歩です。
第115回の出題は、これからの時代に求められる看護師像を明確に示していました。
第116回国家試験を受験する皆さんには、合格する「覚悟」を決めて、学習している知識を「使える力」に変える学びを継続してほしいと思います。